■「杉田はできる選手」
―杉田妃和はどうでしたか?
後藤「杉田はできる選手だよ。あとは、チリ戦を見ると、やっぱり田中美南はシュート能力がある選手だなと思った。ごちゃごちゃっとした場面で点を取るのが彼女の得意パターンだよね、ああいうシュート技術のおかげで得点王を取ったわけだし。キレイな形で準備をしなくても、『え? ここから入るの?』って形でシュートを入れることができる」
大住「しかも、カバーがいたのに上手に外したよね」
後藤「シュート能力だけで見るなら、田中が日本トップなのは間違いない。どうしてその能力をもっと使わないんですか、って僕が質問を投げかけたら、それが女子サッカー界ですごい話題になって大変だったんですけどね」
大住「いつ質問したの?」
後藤「2019年のE―1選手権(釜山)での優勝会見。高倉麻子監督に、田中美南という選手はすごいシュート能力があるから活かさない手はないんじゃないですか、という質問をした。そのとき高倉監督は、国際試合では難しい、って答えたんだけど。そういう監督に意見するような質問をする記者は、女子サッカー界隈で今までいなかったみたいで、その後にずいぶんと話題になったみたい。
日本に帰ったあとも何人かに言われたしね。女子サッカーを巡るメディア世界は、そんな一面もあるんですよ。けど、もし女子サッカーを本当のプロスポーツとしてやっていくのなら、批判みたいなこともどんどんと言っていかないといけない。こっちはプロスポーツと認めているから、そういう発言もするわけだしさ」
大住「オリンピック前の試合で、山下杏也加がものすごい不安定な、リスクのあるプレーをしていたよね。それで僕が、あんなリスクのあるプレーをしていいのか、って質問をしてみたら、はっきりしない答えしか返ってこなかった。だけど、そのリスクは当然分かったと思うんだよね。
それで第1戦の対カナダでは池田咲紀子を使ったと思うんだけど、その池田もリスクのあるプレーをしちゃった。去年から今年にかけてのコロナの影響で、やっぱりチーム強化がちゃんとできていない」
後藤「5年間の積み上げとして考えた時に、どんな方向性をもってチームを積み上げてきたんです、というのが見ていて伝わってこないよね」
大住「うん。わからない」
後藤「たとえば、岩渕をトップにすえて中心としてやっていこうと決めたのは高倉監督だし、
中島依美をボランチで使おうということもやったし、部分部分ではしっかりとした仕事をしている。けど、チーム全体のコンセプトはどんな感じて、どの方向性で作り上げてきたのかと言われると分からない。『読売新聞』で、2011年女子ワールドカップ優勝メンバーの安藤梢(浦和レッズレディース、元日本代表)がコラムを書いていたんだけど、しきりに同じようなことを言っているよ。この5年間は何だったのかって」