■久保がとった「相手が嫌がるポジション」と田中のハイレベルなタテパス
0対0の時間帯のフランスは、逆三角形で構成された中盤の2枚のインサイドハーフが、ダブルボランチを組む遠藤航と田中碧をタイトにチェックしてきました。日本の前2試合を分析して、高温多湿のなかで攻守の切り替えが多くなるトランジションゲームを嫌ったのでしょう。それは、戦術的にも、体力的にも。
自陣にしっかりとコンパクトな陣形を築き、日本の攻撃の速度を上げさせず、むしろ落とさせて吸収することで、フランスはオープンなゲームにしないようにした。そのためにどこを抑えるかとなったときに、起点になる遠藤と田中に前を向かせないようにしてきました。CBにはある程度ボールは持たせるけれど、そこから先は入れさせない、という考え方だったと思います。
フランスの守備を見て、日本は何をしたのか。
自分へのタイトなマークを感じて田中が少しずつ前へ出ていき、トップ下の久保がアンカーの脇にポジションを移していきました。相手の中盤の届かないところ、マークしづらいところに立ち位置を取り出したのです。
戦前のフランスの分析をピッチ上での肌感覚に照らし合わせて、彼らは「こうすれば相手は嫌がる」と考えたのでしょう。久保はアンカーの脇に立つようにして、田中もそこを見逃さない。見逃さないけれど、無理に前に入れて奪われてのカウンターは極力避けるなかで、先制点の場面では久保の位置を見逃さずにスパンとタテパスを入れた。
一見すると何気ない縦パスに見えますが、田中は受けてから相手の立ち位置と重心をみて、タイミングをズラして出している。だから、相手も反応できなかった。受け手の久保の立ち位置といい、素晴らしいタイミングと早さのパスでした。
そしてそのパスを受けた久保は、トラップしてすぐに上田へパスをつなぐ。上田のファーサイドへのシュートが相手GKに弾かれたところを、パスを出したまま足を止めなかった久保が、プッシュしたのでした。