大会唯一の3連勝で、日本がグループリーグを突破した。
7月28日に行なわれたフランス戦で、森保一監督率いる日本は4対0の勝利を収めた。引分けでもグループ首位を確保でき、1点差以内の敗戦でもベスト8入りできる状況で、危なげなく勝利をつかんだのだ。
27分に久保建英が自身3試合連続先制弾を決めると、34分には酒井宏樹が2点目を蹴り込む。後半にも途中出場の三好康児と前田大然が得点を重ねた。
南アフリカ戦、メキシコ戦と、勝利しながらも課題が見えた前2試合を受けて、フランス戦ではチームのパフォーマンスにどんな変化が見られたのか。川崎フロンターレのレジェンドであり日本代表として国際舞台にも立った中村憲剛さんに、今回も分析をしてもらった。サッカー批評Webでは東京五輪の日本代表の全試合を、川崎フロンターレと日本代表で一時代を築いた中村さんの解説でお届けする。
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フランス戦でまず触れるべきは、スタメンの顔ぶれでしょう。
森保一監督は、メキシコ戦から先発を3人入れ替えました。吉田麻也とコンビを組むセンターバックに冨安健洋が入り、旗手怜央が2列目の左サイドに、上田綺世が1トップに起用されました。
前2試合で1トップを務めた林大地は、肉体的な消耗が激しかったのでしょう。控えのメンバーからも外れていました。疲労している選手、起用してコンディションを上げたい選手など、それぞれのコンディションを考慮し、前2試合で勝点6を獲得しているアドバンテージを生かした入れ替えだったと想像しますが、とくに旗手と上田にはコンディション面にプラスして戦略的な狙いもあったと思います。
この試合に臨む森保監督の胸中では、序盤に失点をしたくないというが思いが大きな割合を占めていたと思います。第1戦で三好、第2戦で相馬勇紀が先発した左サイドハーフのポジションには、サイドバックもできて対人に強く、守備力の高い旗手を置きました。そして、上田の起用についても、セットプレーの守備時に高さのある選手をもう一枚確保し、失点をしたくないという意図が含まれていたと思います。
また、フランスの守備を分析して、「守備時は4・5・1で、ブロックをやや深めに作る。背後のスペースはそこまでない。相馬と林が背後へのランニングで、相手守備陣を掻きまわしたメキシコ戦とは違う仕掛けが必要になる」という前提に立ったと感じました。メキシコ以上に個々の身体能力が高く、コンパクトなブロックのなかで強度のある守備に対し、肉弾戦になってもしっかりと戦える、キープ力のある旗手と上田を選んだのではないかと推測します。
前2戦を戦った選手のコンディションと、1点差以内の敗戦でもグループリーグを突破できるアドバンテージを最大限に生かし、戦略的な意図に沿った2人の起用だったと思います。