■たったいちどだった「コンビネーションプレー」


 相手のプレスにチームが分断され、ボールを受けた選手が孤立して寄せられて奪われるという前半の状況と比較すると、後半ははるかによかった。しかしそれでもペナルティーエリアには侵入できなかった。パスはつながるようになっても、コンビネーションプレーはほとんど出せなかったからだ。

 この試合、なでしこジャパンのパスは、ほとんどが「各駅停車」だった。ボールをもった選手がフリーの味方を探し、パスをする。受けた選手はとりあえず止め、相手に寄せられるので、よくて横、悪ければ斜め後ろの選手にパスをするしかない。ときおり、パスを受けた選手が寄せてくるカナダ選手の逆をとって抜き、ドリブルを始めるが、そこでまたパスを出すタイミングを見いだせず、苦し紛れのパスが相手にカットされる……。これでは、フィジカル面で明らかに劣るなでしこジャパンがペナルティーエリアに侵入するような攻撃プレーができるわけがない。

 「コンビネーションプレー」とは何か。この試合で、いちどだけそうした形が出かかったときがあった。遠藤が投入され、長谷川が右サイドに回った直後の後半18分のプレーである。

 DF清水梨紗とのパス交換で右サイドを攻め上がった長谷川。その前を田中が走る。長谷川は田中を止めさせ、足元にパスを出す。田中はワンストップし、右タッチライン沿いに開いていたMF三浦成美に落とす。三浦を囲い込もうと、一挙に詰め寄るカナダの赤いユニホーム。その瞬間、長谷川が田中を追い越して前方のスペースに走る。そこに三浦がワンタッチで浮かせたパスを送る。

 このときは、内側からカバーにきたブキャナンが落ち着いて対処し、長谷川が中央に送ろうとしたパスを体に当てて防いだ。こうした攻撃が何回も繰り返されていれば、必ずカナダの守備に穴が開き、ペナルティーエリア内で決定的な形をつくることができただろう。

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