【東京五輪】「なでしこジャパンの致命的欠陥」(2)たった一度だけのコンビネーションプレーの画像
なでしこジャパンの長谷川唯 撮影/渡辺航滋(SONY α9Ⅱ使用)

7月21日の東京オリンピック初戦、なでしこジャパンはカナダを相手にあっさりと先制されて、1点リードされたゲームを後半39分に追いつくという、きわどい同点劇を繰り広げた。なでしこジャパンの不調は明らかだ。同じグループでは強豪イギリスにチリが0−2と食い下がって、好調ぶりを見せている。このままでは、グループリーグ突破も危ういかもしれない……。


※その1はこちらから

 

 先制点は取られたものの、その後の前半は持ち前の粘り強い守備で相手に決定的チャンスを与えず、次第に相手陣にはいる回数も多くなったなでしこジャパン。

 しかしペナルティーエリアにはまったく侵入できない。相手を下がらせられるのは岩渕のドリブルだけで、他にはまったく攻め手がない。岩渕も相手ペナルティーエリア前にくると立ちはだかる「赤い壁」にはばまれ、外側の味方にパスをするだけ。前半のなでしこジャパンは、ペナルティーエリア外からの苦し紛れのシュートを打っただけだった。

■もし、カナダのGKが代わらなかったら

 ハーフタイム、高倉監督はFW菅澤優衣香に代わってスピードのあるFW田中美南を投入する。そして効果はすぐに表れる。2分、長谷川がこの日初めて左サイドを縦に突破、早めのクロスをペナルティーエリアに走り込む田中に合わせる。田中はうまくコントロールするが、飛び出してきたカナダGKステファニー・ラビーに止められ、もんどり打ってラビーの上に倒れ込む。主審は田中のファウルをとり、ドクターが呼ばれてラビーの治療が行われる。

 その間にVARチェックがはいる。この状況でVARがはいるとしたら、田中が退場になる行為をしたのか、それともラビーが反則を犯しPKとなる可能性があるということなのか——。アウベスバチスタ主審が「オンフィールドレビュー」を行った結果、ボールをコントロールした直後の田中の足をラビーがけっており、判定はPKとなった。ラビーは立ち上がったが、まだ苦しそうな顔をしている。しかし交代せず、そのままゴールラインに立つ。そして田中がキック。だが左に跳んだラビーがしっかりと弾き出す。

 結局、ラビーはこのPKストップの数分後にはプレー続行不可能を伝え、シェリダンと交代する。この後、岩渕が決めた同点ゴールの伏線にシェリダンの判断ミスがあるとしたら、経験豊富なラビーがゴールに立ち続けていたらどうだっただろうかと考えてしまう。サッカーという競技は、さまざまな要素が複雑にからみ、思いがけないところでその要素のひとつが決定的な意味をもったりする。

 PK失敗は、大きな痛手だった。しかし高倉監督は遠藤、さらにMF杉田妃和と、得点力のある選手を投入し、「強気に攻めろ」のメッセージを出す。PKを失敗した田中も、しっかりとボールを受け、岩渕につないで、より「なでしこジャパンらしい」攻撃が出るようになる。だが結局最後まで、岩渕の得点以外、決定的な形をつくることはできなかった。

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