■セルタを復調させた「4-1-3-2」

 少し時を遡る。ジョゼップ・グアルディオラバルセロナで指揮を執った2008年から2012年にかけては、ポゼッションのスタイルが流行していた。実際、その戦い方でグアルディオラは4年間で合計14個のタイトルを獲得した。また、それに伴い、【4-1-2-3】のアンカーシステムが多くのチームで使われるようになった。ビルドアップとポゼッションの観点で、非常に有効性のある布陣だからである。

 だが近年、トレンドはカウンターのスタイルに流れていった。2018年のロシア・ワールドカップで優勝したフランス代表はその顕著な例だった。ラ・リーガにおいても、ホセ・ボルダラス(現バレンシア)を筆頭に、守備を重視する監督が成果を挙げてきた。【4-4-2】の3ラインで全体をコンパクトに保ち、ショートカウンターで相手を仕留めるというやり方だ。

 ラ・リーガの1部で残留を争うようなチームは、大半がその手法を採り入れてきた。ただし、コウデット監督のセルタは違った。ラ・リーガで17位とまさに生き残りを懸けた戦いに身を投じる中でチームを引き継いだコウデット監督は、【4-1-3-2】という特殊なシステムで組織を再構成していった。

 オスカル・ガルシア前監督の頃から、セルタに駒はそろっていた。イアゴ・アスパス、ブライス・メンデスとスペイン代表に選ばれたことのある選手や、マンチェスター・シティでプレーしたノリート、バルセロナでの経験があるデニス・スアレスと攻撃陣のタレントは不足していなかった。
【4-1-3-2】という布陣はラ・リーガでは珍しく、それだけで対峙する相手は面を食らう。だが対戦相手を驚かすばかりではない。攻撃のタレントをうまく当てはめるために、採用されたシステムでもあった。

 2列目の3選手(ノリート/デニス/ブライス)がポジションを入れ替えながら、マークをかく乱する。相手の守備網に穴ができたところで、フリーになった選手がハーフスペースやバイタルエリアに入っていき、ゴール前をこじ開ける。人が動き、ボールが動くフットボールは観ている者をとりこにして、なおかつプレーしている選手に快適性を与えていた。先述したように、降格圏内をさまようようなチームが守備的な戦いに終始するなかで、コウデット監督のセルタは攻撃を重視して勝ち点を重ねていった。

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