■平塚スタジムが教えてくれた
こうして私はスタジアムの「たそがれどき」を楽しんでいたのだが、あるとき思いがけないことに気がついた。きっかけは「Shonan BMWスタジアム平塚」である。このスタジアムは、ことし命名権契約が変わり、「レモンガススタジアム平塚」となったが、メインスタンドに座ると、屋根のないバックスタンド上空に空が広がり、夜間の試合前には刻々と暗くなっていく様子を楽しむことができる。そしてなぜか私が平塚に取材に行く日は雨のことが多く、ときには落雷の様子まで見ることができるのである。
ある日、試合前の夕刻に雨が上がり、暮れなずむ東の空にきれいな虹が出た。よく見ると、その虹は二重になっており、バックスタンドの中央と、その向こうの野球場の照明塔のあたりから2本の虹が立ちのぼっていた。例によって、私はぽかんと口を開け、しばらくの間、その光景に見とれていた。
何週間かして、その虹の写真を次男に見せた。すると彼はこう言った。
「虹は見えないけど、富士山がよく見えるよ」