■前半から見えた苦戦の“予兆”

 話を元に戻そう。

 前半は、日本がまったく危なげない内容の試合をしたのだ。しかし、後半に入るとパフォーマンスが急激に低下し、ホンジュラスが日本陳内深い位置までボールを運び始めた。それでも、決定機のようなものはまったく作らせていなかったのが、65分に自陣深いところでミスをして相手にボールを奪われ、最後は左からリゴベルト・リバスが入れたクロスが中央で反応した富安に当たってオウンゴールとなってしまった。

 その後も、日本は85分のゴールシーンを除いて盛り返すことができず、後味の悪い印象を残してしまった。前後半で、まったく違う試合になってしまったのだ。

 しかし、これはホンジュラスが何かを変えたから起こったという現象ではない。

 実際、すでに前半の日本が快調に試合を進めている間にも“予兆”は見えていた。

 手元の観戦ノートを見ると、前半の30分くらいのところにこう殴り書きがしてある。
「JPN選手かなりきつそう」、と。

 ちょっと試合が切れた瞬間に、ボールから遠いところでフッと肩を落としたり、膝に手をやる選手が見かけられるようになっていたのだ。

 試合後の記者会見で森保監督も自ら語ったが、選手たちのコンディションは(当然のことながら)100%からはほど遠い状態だった。

 日本の選手たちのコンディションはそれぞれがバラバラだった。

「ヨーロッパ組」の選手たちは5月に長いシーズンが終わって、5月末から6月上旬にかけて日本代表の国際試合を戦った後はシーズンオフに入っていた。もちろん、オリンピックがあるのだから、コンディションを維持するためのトレーニングは欠かさなかったはずだが、同時に長いシーズンの後にはしっかりと休養を取ることも必要不可欠だ。

 彼らにとってホンジュラス戦は1か月半近くのブランクの後の実戦だった。

 Jリーグの選手たちは、2月末にリーグ戦が開幕し、徐々に疲労が溜まってきている時期ではあるが、シーズン中なのでコンディションは良好のはずだ。ただ、彼らも今は代表合宿に入って、負荷の大きいトレーニングを行っているところだ。

 さらに、Jリーグ組の中でもAFCチャンピオンズリーグACL)に出場しているクラブの選手は一連の代表戦が終わるとすぐにタイやウズベキスタンに飛んで、気温が高い過酷な環境やピッチ状態の悪さの中で、中2日で6試合を戦っていた。

 日程の関係で一足早く全日程を終了した名古屋グランパスの相馬はホンジュラス戦でも後半に交代出場したが、まだ90分を戦える状態ではなかったし、川崎フロンターレのACLは2日前に終了したばかりなので、三笘薫旗手怜央はホンジュラス戦ではベンチ入りもできなかった(幸い、川崎は最終戦を待たずにグループ首位通過を決めていたので、2人とも最終戦には出場せずにすんだ)。

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