■ヨシオはこれまでと違う「新しいサッカー選手」

 私が見てきたJリーグの選手のなかで、実はもうひとり、「左右両利き」に近い選手がいる。それが、興味深いことに、7月に柏から浦和への移籍が決まった江坂任なのだ。江坂は本来右利きらしいが、左足でボールをキープ、ドリブルすることもできるし、左足でシュートを打つだけでなく、CKやFKを左足でけることもある。ロドリゲス監督は江坂を「小泉のポジションができる。小泉と並べて使うこともできる」と評している。

 小泉は、狭い地域でパスを受けることもできるし、下がってパスを受け、たくみにターンしてスルーパスを出すこともできる。ポジションの的確さとタイミングは、文句のつけようがない。相手からボールを守ることだけでなく、相手からボールを奪うことにも長けている。当然、今後、日本代表からも声がかかるはずだ。そうなれば、中学生時代からの親友である坂元とコンビを組むこともあるかもしれない。

 スルーパスやシュートなど勝利に直結するプレーだけでなく、小泉佳穂という選手の「完全左右両利き」という「新しいサッカー選手像」を見るだけも、浦和の試合を見に行く価値は十分ある。小泉が今季のJリーグ最大の驚きのひとつであることは間違いない。

 以下は蛇足である。小泉に関して、私には小さな違和感がある。監督や仲間、チームスタッフから、「ヨシオ、ヨシオ」と呼ばれていることだ。何か、ロックに凝って髪の毛を金色に染めてしまった高校生の男の子を、親から頼まれ、親戚のおじさんが「ヨシオあのなあ、世の中はそんなに甘くないぞ……」と叱っているような印象を受けるのは私だけだろうか。私なら「ヨシ」と呼ぶが……。まあ、この呼び名は琉球時代からのものらしいし、サポーターたちも、オールドサポーターのおじさんおばさんたちも「ヨシオ」と呼ぶようになった現在、それは愛する「息子」に呼びかけるようでもあり、いまさら変えるのもおかしいかもしれないが。

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4