■美しかったアビスパ福岡戦での左足ゴール

「ゴールが足りない」と言っていた小泉の浦和初ゴールは6月13日、ルヴァンカッププレーオフの神戸戦(ホーム)。序盤から果敢にゴールを狙っていた小泉だったが、前半16分、神戸の左CKを浦和がはね返したボールを神戸の酒井高徳がけり損なったところをすかさず奪う。そして自陣ペナルティーエリア前からそのボールを追って相手陣に進み、いちど左に走るユンカーにボールが渡った後も足を止めずに前進、そこにGKを引きつけたユンカーから「どうぞ」と言わんばかりのパスがきた。小泉は体を開き、左利き選手として左足で無人のゴールにボールを送り込んだ。

 Jリーグでの初得点はさらに鮮烈だった。6月27日の福岡戦(ホーム)。前半11分、相手ペナルティーエリアの右前で右タッチライン際の西大伍から絶妙のポジショニングでパスを受ける。ボールタッチは左足インサイド。この瞬間の小泉は「右利き」だった。だが右前から福岡MF前寛之がくるのを見た瞬間に「左利き」にスイッチが変わる。

 右足インサイドで左へ持ちだして前のタックルを誘うと、左足アウトサイドでそれをかわし、次の左足で相手ゴール方向にボールをもちだす。そしてペナルティーアークの前に侵入すると、左足で強烈なシュートをゴール右隅に叩き込んだのだ。

 キック自体も本当に美しいものだった。左足を振り回したとか、左足でけったというようなものではなかった。腰を鋭く回転させてまず左の骨盤を強く押し出し、左足はその骨盤に引っぱられてついてくるような形でボールにミートしたのだ。筋力ではなく、自分の体がもっている力をすべてボールのミートポイントである左足インステップに集約させたキックだった。

 それは、小泉佳穂というプレーヤーがいかにその体をうまく使い、自分のもっている力を無駄にすることなくプレーに結びつけているかの、何よりの証拠だった。そしてそうした能力と「完全左右両利き」という他に例のない能力が相まって、彼は能力を開花させ、急速にJリーグのトップクラスに躍り出たのだ。

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