■試されるポステコグルーのサッカー哲学

 悪いのは制度ではない。「サッカーをすること」より「勝利を得る」ことを優先させる「勝利至上主義」だ。ベンゲルやファーガソンやモウリーニョが嘆いたのも、「互いに攻撃的にプレーしてサッカーをより魅力のあるものにしよう」などという理想主義的な呼び掛けではなく、ただ、自分のチームが「実力どおり」に勝ち上がるのに障害となる相手チームの姿勢を憎んだだけのものだ。

 だから私は、勝つこと以上に「エキサイティングな攻撃サッカーができたかどうか」を偏愛するミシャ・ペトロヴィッチアンジェ・ポステコグルーなどの監督を敬愛する。

だがアンジェは、世界のサッカーから見れば「田舎リーグ」の「田舎チーム」である横浜F・マリノスJリーグという舞台を離れ、現在の経営規模では欧州のトップ30にもはいらない(2019年の営業収益は8340万ポンド=約113億円)とはいえ、スコットランドでは「常勝」を義務付けられているセルティックでも、同じ哲学を貫けるのだろうか――。

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