で、勝者はどっちだ。試合が終わっても勝ち負けがわからない! スコア上はイーブンになっても、複雑な計算方式で勝者と敗者が生まれるのがアウェーゴール決着だ。試合前には理解していたつもりでも、試合後、まわりの顔色をそっと窺ったりして。そのアウェーゴール・ルールが終了になりそうだ。それで、サッカーは面白くなるのかつまらなくなるのか――。
■守備的になりすぎたホームチーム
そうした微妙な違いはあるものの、こうして「世界の常識」となっている「アウェーゴール・ルール」を、では、UEFAはなぜ廃止しようとしているのか。
始まりは、多くの強豪クラブの監督たちからの批判だった。アレックス・ファーガソン、アーセン・ベンゲル、トーマス・トゥヘル、ディエゴ・シメオネ、ジョゼ・モウリーニョらが、次々と「アウェーゴール・ルール」に関する不満を口にした。計算ばかりが先にたち、試合がつまらなくなったというのである。
元来、「アウェーゴール・ルール」は、より攻撃的でファンが楽しめるサッカーを目指したものだった。2戦制の戦いでは、どうしても「アウェーで引き分け、ホームで勝つ」という考え方が主流になる。だから第1戦は、アウェーチームが守備的になり、自陣に引いて守りを固めるという形になる。アウェーチームにも攻撃のモチベーションを与えようというのが、「アウェーゴール・ルール」の目的だった。
ところがこのルールが定着すると、こんどはホームチームが失点を警戒するあまり、守備的になる。とくにビッグクラブと対戦する弱小クラブは、ホームの第1戦で守備を固めて0-0の引き分けに持ち込み、アウェーの第2戦も再び守備を固め戦い、カウンターから1点を目指すというプランに陥りがちだ。