■今度はアウェーチームがドン引きに

「当初の想定とは、まったく反対の効果になってしまっている。いまでは、ホームでしっかり守るのがトレンドだ」と、ベンゲルは2008年という早い時期から語っている。

 このルールが採用された1960年代には、欧州各国間の旅行はより時間も費用もかかった。ピッチの状態は千差万別で、「フーリガン時代」を経る前、まだ規制などほとんどないホームのサポーターがアウェーチームにかける圧力は今日の比ではなかった。そしてレフェリングも、サポーターの声に多分に影響された。そうした状況での「アウェーゲーム」は、ピッチもレフェリングもスタンダード化が進んだ今日のサッカーとは大きく違う。

 そうしたなか、「アウェーゴール・ルール」はホームチームをより守備的にし、カウンターに頼るつまらないサッカーにしてしまっているというのだ。それはサッカーの魅力を損ね、人気低下にもつながるという。

 こうした批判を受け、UEFAは2019年から検討にはいり、その結論がようやく出たのが、ことしの5月だった。

 だが、「アウェーゴール・ルール」を廃止すれば、こんどは再びアウェーチームが守備的になるのは間違いない。カウンターを狙うどころか、ドン引きのガチガチサッカーになるのは目に見えている。そしてもしかすると、遠からぬ将来に「アウェーゴール・ルール」が復活する可能性さえある。

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