■東京オリンピックの中心はベレーザ系

 さて、僕がこの試合を観戦に行った前日の6月18日には東京オリンピックでメダル獲得を目指す日本女子代表(なでしこジャパン)のメンバーが発表された。

 顔ぶれは、ほぼ予想通りだった。これまであまり馴染みのない顔ぶれとしてはMFの塩越柚歩がいるが、先日のウクライナ戦、メキシコ戦のパフォーマンスを見れば選出は当然だろうし、身長が166センチとサイズがあるのも魅力的だ。

 そんな中で、高倉麻子監督が就任してからも招集されることが多かったベテランの(2011年優勝経験者の)DF鮫島彩が選ばれず、代わりにDFとして若い北村菜々美と宝田沙織がそろって抜擢されたところがちょっとしたサプライズだったかもしれない(ともに1999年生まれでまだ21歳)。

 選出された選手を所属チーム別に見てみると、最多が日テレ・東京ヴェルディベレーザ(以下「ベレーザ」)の5人、三菱重工浦和レッズレディース(「浦和」)とINAC神戸レオネッサ(「神戸」)がともに4人。そして、海外組が5人で合計18名という内訳になっている。

 昨年行われた「なでしこリーグ」(WEリーグ発足前最後のシーズン)では浦和が優勝し、神戸が2位、ベレーザが3位だった。WEリーグ初年度の優勝候補なのも間違いない。つまり、今回の代表のうち、国内組はすべて現在の女子サッカー界の“3強”からの選出となっており、人数的にも3クラブからほぼ均等に選ばれているのだ。

 もっとも、海外組の5名のうち長谷川唯と籾木結花の2人は2020年にはベレーザで活躍していた選手だし、今や代表のエースに成長し、オリンピックでは「10番」を着けることになった岩渕真奈も2017年から20年まで神戸に所属していたものの、もともとは中学生時代からベレーザの下部組織である「メニーナ」で育った選手であり、2013年に最初にドイツに渡るまではずっとベレーザに所属していた。

 さらに、メキシコ戦で久しぶりにトップとして先発して積極的なプレーを見せた田中美南は昨年から神戸でプレーしているが、もともとはメニーナ育ちでベレーザで活躍。2016年から4年連続で「なでしこリーグ」得点王となった選手だ。プレースタイルとしては非ベレーザ的ではあるが、田中もベレーザ系の一員である。

 つまり、長谷川、籾木、岩渕、田中の4人を加えれば、ベレーザ勢が9人ということになり、やはりベレーザこそが日本サッカーの中心であり、自身もベレーザで長く活躍した高倉麻子監督はベレーザ中心のチームを作ったと言える。

※第2回につづく
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