「決定力とは何か」キャスパー・ユンカー(3) 「天才のゴラッソではなく、オルンガのようなモンスターでもない」の画像
浦和レッズのキャスパー・ユンカー 撮影/原壮史

※第2回はこちらから

お気づきだったろうか。ユンカー旋風が静かに吹き始めている。昨年のオルンガ台風ほどの派手さはない。しかし静かに、着実にブームは胎動を始めた。J1デビューから出場4試合のリーグ戦すべてでゴールを決めて、計5得点。他を圧倒する高さや強さ、スピード、ボールテクニックを披露するわけではない。武器は、「決定力」というストライカーとしての能力そのもの。わたしたちは、ユンカーを分析して、理解する必要がある。浦和レッズは彼のデビュー以来、3勝1分け無敗で順位を8位に上げてきた。

■ユンカーの決定力の最大の秘密とは

 こうした冷静さとも関連するが、ユンカーの決定力の最大の秘密は、ゴールを取るためのポジショニングの良さ、そして体の向きのつくり方にある。そうした「基本」があるからこそ、シュート時に余裕ができ、冷静な判断を下すことができるのだ。

「僕の強みはペナルティーエリア内でのポジショニング」

 チームに合流して4日目、4月29日にオンラインで行われた「新加入記者会見」で、ユンカーは繰り返しこう語っている。その言葉どおり、ユンカーは「シュート」から逆算して理にかなったポジションを適切なタイミングで取り、得点に結びつけている。

 仙台戦では、武藤にスペースを空けるために右に動きながらも、スムーズなステップで体をゴールに向け、しかもいたずらに前に出ないようにして、自分の前にボールを止めてシュートを打つためのスペースを確保した。極端に言えば、彼の「仕事」の8割はここまでで終わっている。武藤からパスがきたらワンタッチでそこにボールを置き、GKを見ながらゴールに送り込むだけだった。

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