■なぜ、決定力が日本サッカーの課題なのか

 ユンカーの得点は、けっして天才による「ゴラッソ」ではない。彼は柏以外の昨年のJ1チームを恐怖に陥れたマイケル・オルンガのような「モンスター」ではないし、フィジカル面も技術面も日本人選手からかけ離れているわけではない。ただ、彼はシュートから逆算したポジショニングや体の向きの作り方を自分自身で考え、工夫し、試合のなかで愚直に実践する。そうした「準備の良さ」が、いざボールがきたときの落ち着きにつながり、「オンターゲット率64%」「得点率43%」という驚くべき効率性を生んでいるのだ。

 日本のサッカーで「決定力」が課題になって何十年もたつ。テクニックの向上、戦術の緻密化によって、以前と比較するとチャンスの数は増えている。しかしプレーヤーたちは、それを大盤振る舞いで無駄にし続けているし、コーチたちは、「決定力は個人の問題」というだけで解決の気配もない。

 ユンカーの「毎試合得点」がいつまでも続くわけではない。次の試合にもストップするかもしれない。しかし5月5日の「日本デビュー」以来彼が見せ続けてきた「決定力」がどこから来ているのか、それを分析し、日本のサッカーに生かすのは、日本サッカーの最優先課題ではないか。この課題の解決なくして、日本が世界のトップクラスに並ぶ日などくるはずがない。

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