■名古屋以上にリアリストだった川崎

 堅守の難しいところは、守備には限界があるということだ。個人能力に優れた選手でどんなにオーガナイズされた守備を構築できたとしても、そしてそれを実際のピッチで実行できたとしても、失点する可能性はある。直接フリーキックで陥れられるかもしれないし、ゴール前での“事故”という要素もある。立派な「公式」があったところで、実際の人生は「変数」だらけなのだ。問題は、その局面に当たったときにどう挽回するかなのだが、名古屋の攻撃は残念ながら単発でしかない。鬼木達監督が川崎フロンターレに課す「1試合3得点」という数字は、「変数」を力でねじ伏せるためのもの。相手にかかわらず3得点を奪うと公言することは一見すると傲慢に見えるが、実際にはとてもシビアでリアリストな考えなのだ。

 この大事な連戦で、マッシモ・フィッカデンティ監督という堅守システムの構築に優れた指揮官を欠いて戦うこととなった。コロナの陽性反応が出て、急遽、コンカコーチが指揮を執ることとなった。そのコンカコーチは、川崎戦の前のウォーミングアップでは、当然、選手の練習に付き合う。監督であれば、他の作業に時間を費やすことができたが、コンカコーチはまずはいつも通り試合に挑む選手のコンディションアップをしなければならない。これも、実際の「変数」で、いつ何が起きるかは分からない。神様は、大事な場面で変化球を投げてくるのが常だからだ。

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