■明本は”第2の坂元”になれるか
J2からJ1へ個人昇格した選手が活躍するのは、もはや例外的ではない。2019年のオナイウ阿道(当時大分トリニータ、現横浜F・マリノス)、20年の坂元達裕(セレッソ大阪)らに続いて、今シーズンもJ2からステップアップしたタレントがJ1に素早く適応している。
まずは浦和レッズの2人に触れたい。明本考浩と小泉佳穂である。
栃木SCから加入した明本は、リカルド・ロドリゲス監督のサッカーにピタリとハマるタレントだ。
スペイン人指揮官は前線からのハイプレスを志向し、ポジションを問わずにハードワークを求める。プロ2年目の23歳は、とにかく動きを止めない。2列目が基本ポジションとなっている浦和では、二度追いはもちろん、三度追いまでやってみせる。プレスをかけるだけでなく、奪ったあとに前へ出ていく推進力も持つ。徳島ヴォルティスを率いて栃木と対戦したロドリゲス監督が、このレフティーに興味を示したのは当然だっただろう。
浦和が10試合を消化した4月18日時点で、全10試合に出場してチーム6番目のプレータイムを記録している。7節の鹿島アントラーズ戦では、DFラインの背後を取って移籍後初ゴールをゲットした。フリーランニングの質が高く、フィニッシュに冷静な彼らしい得点だった。
注目すべきは2節のサガン鳥栖戦と6節の川崎フロンターレ戦だ。いずれも明本がスタメンを外れ、浦和は敗れている。
彼が先発して敗れた試合もある。明本個人とチームの結果を、直接的に結びつけるべきではないかもしれない。ただ、攻守の切り替えの早さが目を引き、疲れ知らずの運動量でチームに活力を与えるこの男が、チームに不可欠となっているのは間違いない。
スペイン人指揮官はシステムを使い分け、試合中に変更もする。シーズン序盤は4バックをベースに、中盤から前線の選手の立ち位置を変えて対応している。明本は2列目で起用されているが、栃木では2トップとボランチでもプレーした。ユーティリティ性の高い彼を、ロドリゲス監督は頼りにしているだろう。
大卒1年目をJ2で過ごし、2年目からJ1にステップアップした足跡は、坂元(C大阪)と同じでだ。レフティーという共通点もある。得点やアシストなどの勝利に直結する働きを見せ、坂元のように日本代表も狙っていきたい。