■PKもののファウルを見逃し

「入りは良かった」

 試合後、長谷部茂利監督が語ったように、立ち上がりは福岡が良かった。フアンマ・デルガド渡大生を2トップに置き、右に吉岡雅和、左に石津大介を置いた4-2-2-2の布陣をコンパクトに保ち、相手陣で川崎に厳しくプレスをかけ、中盤の前寛之とカウエがこぼれたボールを回収して、いきなり川崎のゴールに襲いかかったのだ。

 川崎が落ち着きを取り戻し、パスをつないで相手ゴールに迫ることができるようになったのが10分過ぎ。左FW長谷川竜也のクロスを右FW小林悠がボレーで襲って福岡GK杉山のセーブを誘い、拾ったボールをさらにシュートしたのが13分。その直後には、この試合のひとつの「綾」となる家本政明主審の一連の判定の最初のひとつが生まれる。

 左タッチライン沿いでFW知念慶のパスを受けた遠野が突破。ペナルティーエリアにはいったところで内側から戻ってきてカバーしようとした福岡MF前がからみ、遠野が倒れる。PKかと思われたが、家本主審の判定は「ノーファウル」。前は明らかに遠野の左腕をつかみ、それが原因で遠野は倒れたのだが、VARもはいらず、そのまま試合は続行された。

 前半19分に遠野のゴールで川崎が先制した後、24分には、こんどは福岡の攻撃でPKではないかと思われるシーンが生まれる。右コーナー近くからのスローイン。右サイドバックのサロモンソンが投げ、吉岡からリターンされたボールを鋭くゴール前に送ると、ニアポスト前で福岡FWフアンマと川崎DF車屋紳太郎がもつれながら倒れ込む。タイミングを計って走り込みながらヘディングシュートしようとしたフアンマを、遅れた車屋がつかみ、そのままふたりで倒れ込んだもので、これもPKにするべきもののように思われた。

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