川崎対福岡「サッカー批評」の醍醐味(1)「3対1」のスコアに詰まった「紙一重」の画像
遠野大弥(川崎フロンターレ) 撮影:中地拓也

 そこには、人に語りたくなるゲームがあった――。結果しか知らない人に、この試合の素晴らしさをどう伝えたらいいだろう。まっさらだったゲームが両チームの間で左右に動き、上下に起伏して、90分+アディショナルタイムの時間が流れると、勝者と敗者に分かれていた。それだけのことだけれど、人に語らずにはいられない内容がぎっしり詰まっていた。4月14日に等々力競技場で行われた試合の「勝負の分かれ目」について考えた。

■紙一重だった勝敗の行方

 4月中旬というのに真冬のような冷たい雨にさらされた夜、川崎の等々力競技場でJ1の川崎フロンターレアビスパ福岡を見た。本来は6月23日に予定されていた第19節の試合。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループリーグが6月下旬から7月上旬に変更になったため、ACL出場の他3クラブとの試合とともに、この日に組み入れられたものだった。

 昨シーズン、圧倒的な強さでJ1優勝を飾り、今季もこれまで10戦して9勝1分け。その強さを持続している川崎と、J1に昇格したばかりの福岡の対戦。3-1というスコアに、「やっぱりな」と思ったファンも多いに違いない。しかし実際には、どう転んでもおかしくない試合だった。少なくとも、この試合の福岡は、勝ち点1(引き分け)は持って帰る資格があった。

 試合で感じたのは、「勝負」というものの厳しさ、微妙さである。勝利の喜びと敗戦の悔しさは、ほんの「紙一重」のところにある。そのわずかな差が「勝ち点3」と「ゼロ」という無慈悲な数字となり、シーズンが進むとともにその数字の積み上げだけがチームを浮き立たせ、あるいは地獄の苦しみにのたうちまわらせることになる。そしてその「紙一重」の差のなかに、両監督の分析と決断、選手たちの決意と献身、冷静な判断力などが、語り尽くせないストーリーのようにからまり、詰まっているのだ。

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