■美しかった遠野大弥の先制ゴール
前週の水曜日にも試合があったため、この日試合をした8チームはすべて4連戦という日程だった。疲労を考慮して、どのチームも先発メンバーをかなり入れ替えた。等々力の試合では、川崎は5人、福岡は6人メンバーを入れ替えての対戦だった。
両チームの選手のなかには、「古巣との対決」という選手が3人含まれていた。今季初先発の福岡GK杉山力裕は、2014年まで9シーズン川崎でプレーした選手。同じくDF奈良竜樹は、杉山とは重ならないが、2016年から2019年まで川崎で活躍し、2回のJリーグ優勝も経験している。昨季は鹿島でプレーし、今季J1に昇格した福岡に移った。
一方、川崎のMF遠野大弥は、昨年は福岡でプレーし、41試合に出場してチーム最多の11ゴールを記録、J1昇格に大きく貢献した若手アタッカーである。静岡県の藤枝明誠高校からJFLのHonda FC入りして3シーズンプレーし、昨年はじめに川崎に移籍したが、そのまま1年間福岡に貸し出されていたのだ。そして活躍を認められて今季川崎に戻り、開幕からベンチにはいって3月3日のC大阪戦でJ1デビュー、続く仙台戦では早くもゴールを記録している。
遠野は、前半19分にCKのこぼれ球をペナルティーエリア外で拾い、思い切り右足を振り抜いて先制点を決めた。しかし大げさな喜びは表現しなかった。昨年、プロ1年目の遠野を飛躍させてくれた福岡というチームに対する感謝の念、福岡サポーターへの思いなどが重なったのだ。たくさんのチームメートが駆け寄って遠野を囲んだが、そうした遠野の気持ちへの思いやりが表れ、とても美しいシーンだった。