ここでクイズです。キャプテンがする試合前の重要事とはなんでしょう。もったいぶらずに答えれば、正解は「コイントス」。今回は、コイントスの正しいお作法。小さな勝負の物語である。サッカーのみならず、全キャプテンが必読――。
■試合後半の集中力のために
最近のJリーグを見ていると、「コイントス」をしていないのではないかと、ときどき疑う。多くの試合で、両チームが前半はサポーターを背にしてプレーし、後半はサポーターに向かって攻める形になるからだ。ホームでもアウェーでも、だいたいサポーターはゴール裏に分かれているから、もし両チームが「前半はサポーターを背に」という希望をもっているのなら、どちらのエンドを取るかは競合しない。そして、私の感覚では、Jリーグの試合の90%以上がその形になっているのである。
「土田が言い出した」と、当時浦和レッズのキャプテンを務めていた福田正博さんに聞いたことがある。もう四半世紀も前の話である。
「前半はサポーターを背にするサイドをとってほしいと言い出したのは、(GKの)土田(尚史)だ。僕はトスには滅法強い。だから、ホームでの大半の試合がそうなった。試合の後半、サポーターに向かって攻めていくと、集中力がものすごく高まった。大宮でおもしろいようにゴールが決まったのは、そのおかげだった」(『浦和レッズ・オフィシャル・イヤーブック1995』より)
そんな感覚が、やがてどのチームにも共有されるものになったのではないか。そしてコイントスの結果に関係なく、ほとんどの試合で、両チームともにサポーターを背に試合を始めるようになったのではないだろうか。