■その起源はローマ時代に

「プレーの開始および再開」について定めたルール第8条には、「コイントスに勝ったチームが、前半に攻めるゴールか、またはキックオフを行うかを決める」と定められている。練習試合ならキャプテン同士の「じゃんけん」でもいいのだが、公式戦では「コイントス」とはっきり定められているので、主審はそのためのコインを持っていなければならない。

 ただこのコインは試合前にいちど使うだけで、あとは無用の長物だからすこしやっかいだ。普通はレフェリーウエアのポケット(胸かパンツ)に入れるのだが、試合中に走っていて、あるいはポケットからカードやノートを取り出すときに落ちてしまうことがあるからだ。Jリーグでは主審が第4審判に預けているようだ。

「コイントス」というのは、大昔からあったものらしい。ローマ時代に起源を発するというから、江戸期の日本で成立して20世紀になってから世界に広まったという研究まである「じゃんけん」とはずいぶん歴史が違う。ローマ時代には表に当時の為政者の顔、裏に船を浮き彫りにしたコインを使って神の意志を占っていた。だからコイントスのことを「船か顔か」と言っていた。

 たとえば森で道に迷って右に行くか左に行くか決めかねているとき、「顔が出たら右、船が出たら左」と決め、コインを投げ上げ、地面に落ちて上になった面に従うのである。その方法がどのような経緯で現代のスポーツに取り入れられたのかは、よくわからない。しかし現在では、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなどの「フットボール系」スポーツだけでなく、クリケットやテニスでも使われている。

 驚きは、選挙で同得票数の候補者から当選者を決めるときにコイントスが使われる国があるということだ。日本では「くじ」を引いて決めるのが普通らしい。「運任せ」「天任せ」という面では変わりはないが、「お賽銭」という文化はあるものの、日本では「コインを投げる」という行為自体があまり行儀のよろしくないものと思われているのかもしれない。

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