本来は相容れない関係だった。それでも鹿島は恋焦がれ、ザーゴを求めた。恋い焦がれたのは、ザーゴその人でもあるし、変革という自身に向けられたものでもある。どんなに強く想ってもかなわない想いがあるのは、恋愛の真理だ。両者の関係は、それに似ている。
まず鹿島から見れば、求めていたのは「ルールに乗っ取った強さ作り」だ。それは、“鹿島らしさ”から脱却するという、自己否定も含む。“鹿島らしさ”という「美辞」は、実に曖昧で、勝負強さ、とも、しぶとさ、とも表現されるが、突き詰めれば“特定の個人のメンタリティに依存すること”でもある。
近年、主力選手が早々に海外移籍してはそのたびにチーム作りの修正を迫られる状況が続いており、「人よりルール」を軸に据えようという考えは至極当然な流れだろう。そんな中で白羽の矢を立てたのが、ザーゴだった。
そのザーゴがどんな人物か、というのは、実は分かりにくい。ストーミングを看板とするレッドブルグループの一員である一方で、彼個人が求めるのはポジショナルなプレーであったりもする。レッドブルグループは、攻守における迅速な切り替えを主軸にする。高い位置でプレスを掛け、ボールを保持すればとたんに縦を狙う。日本のピッチで表現したサッカーは、そのどちらをも想起させるもので、そんな“ミステリー”が鹿島の恋募を大きくしたと言えなくもない。