■対照的だった両チームの攻守のシステム
だが、試合が進むに従って、琉球の選手たちはポジションを変えて両サイドバックを高い位置に張り出させてきた。そう、守備の局面と攻撃の局面でシステムを変更する、いわゆる「可変システム」である。
琉球のボランチは“司令塔”的なベテラン(35歳)の上里一将と風間八宏(前名古屋監督)の息子の風間宏希だ。
攻撃の局面に入ると、その風間宏希が2人のセンターバックの間にポジションを下げて、両サイドバック(右が田中恵太、左が沼田圭悟)が高い位置に張り出し、サイドハーフ(右が宏希の弟の風間宏矢で、左は日本代表清武弘嗣の弟の清武功暉)は中に入ってインサイドハーフもしくはシャドーストライカー的な位置でプレーする(この変化が基本パターンだが、時には風間宏希が最終ラインに落ちるのではなく、右サイドバックの田中だけが前線に上がって、左サイドバックの沼田が最終ラインに残ってスリーバックになることもあれば、両サイドバックが上がってツートップになることもある)。
「ほう、樋口監督も新しい試みに取り組んでいるんだ」と、僕はちょっと感心しながらこの可変システムの動きを見ていた。
もちろん、ポジションチェンジをするにしても、上に述べたようなパターンに沿っての動きなので、けっして自由奔放にポジションを変えるわけではない。また、システムを変化させても選手と選手の間の距離感はつねにしっかりと保たれていて、スペースを開けてしまうようなことはけっしてしない。
そのあたりは、いつも細部にこだわって手堅く選手を配置する樋口監督らしいところである。
一方、千葉の方はほとんどシステムの変化はさせないで、4-4-2の形を頑なに守ったまま戦おうとしているようだ。変化と言えば、左のサイドハーフに入っている岩崎悠人がドリブルでかき回したり、あるいは前線で大きく動いて右サイドまで顔を出したりして、それに伴って左サイドバックの小田逸稀が上がってくるくらいのものだ。
それぞれの選手が、それぞれのポジションで頑張ろうというのがコンセプトなのだろうか。
こうして、オリジナルポジションだけを見ればよく似た4-4-2同士の試合に見えたのだが、実際は、好守でシステムを変えながら戦う琉球と、オリジナルの形を維持する千葉というように、コンセプトの違いが明らかな試合だったのである。