※その２はこちら
日本で１０年間プレーしたのち、日本国籍を取得した呂比須ワグナー。帰化してわずか１６日後の１９９７年９月２８日の大一番、国立競技場で行われたフランスワールドカップ最終予選の対韓国戦に出場したが、呂比須が交代したのちに日本は２失点して、１対２と敗北を喫してしまう。しかし、１１月１日に行われたアウェーのソウルに乗り込んでの第２戦で日本は韓国を圧倒。呂比須は前半３２分にゴールを決める。（取材／文・藤原清美）
呂比須ワグナー ろぺす・わぐなー
１９６９年１月２９日、ブラジル・サンパウロ州フランカで８人兄弟の末っ子として生まれる。８６年、１７歳でサンパウロＦＣとプロ契約。８７年にオスカーとともに日産自動車サッカー部（のちの横浜F・マリノス）に移籍。９０年、日立（のちの柏レイソル）に移籍。９５年、ＪＦＬの本田技研工業に移籍し、９５年、９６年にＪＦＬの得点王。９７年にベルマーレ平塚に移籍。同年９月に帰化して日本国籍を取得。日本代表としてアジア最終予選、９８年のフランスＷ杯に出場する。その後、名古屋グランパスエイト、ＦＣ東京、アビスパ福岡を経て、２００２年に現役を引退。指導者の道に入り、ブラジルでクラブチームの監督を歴任し、２０１７年にアルビレックス新潟の監督。その後、再びブラジルでサッカー指導にあたる。現在はヴィラ・ノーヴァの監督。
■「１対１にならずに、いつでも誰かがカバーしよう」
——後半、韓国は勢いを取り戻して、猛攻を仕掛け始め、日本の守備陣はかなり苦しみました。
「僕らは分かっていたんだ。２対０でハーフタイムになった時、ロッカールームで僕らが話し合ったのは、こういう状況では、守ることも分かっていなければ、ということ。
相手はすべてを賭けてくる。簡単には終わらせてくれない。すごく押されるだろう。でも、そういう苦しみへの対処の仕方も分かっていなければ。
だから、岡田サン（岡田武史監督）が確認したのは、こういうことだった。
“守備を倍増する。１対１にならずに、いつでも誰かがカバーしよう。守備のバランスを取るために。そして、カウンターアタックのチャンスを引き出して、さらにゴールを決めよう”
こういうプレーがあったんだ。後半始まってすぐだ。中田（英寿）がボールを奪って、引き離して、確か、北澤（豪）に出したんだ。で、北澤が僕をゴール前でフリーにしてくれた。
で、僕がシュートしたんだけど、ボールは相手ＧＫの足元に行ってしまい、ＧＫの好セーブに繋がってしまった。あれが決まっていたら、試合はもっと落ち着いたものになったんだけどね。
でも、ともかく岡田監督は僕らに準備をさせていた。プレッシャーにうまく対処し、落ち着いて守れるように。そして、可能な限り、スピーディーにカウンターアタックに出られるように。
僕らはとても集中できていたと思う。大きなプレッシャーには苦しんだけど、それも当然だ、相手のホームだったんだから。そうではあっても、素晴らしい試合だった。
日本代表は、間違っていなければ、確か１１年間、ソウルで勝っていなかったんだよね。だから、とても嬉しかったし、ロッカールームに戻った時は、もうお祭り騒ぎだったよ。大いに祝った。みんなで抱き合って、すごく感動的だった」
