■しっかりと新戦力も活用

 そして、驚くべきはフィッカデンティ監督の引き出しの多さである。なかなか先発メンバーを崩さないが、少しずつチームになじませつつ、チームの新たな表情も引き出そうとする。

 この日、フィッカデンティ監督が打った手は、新たなフォーメーションだった。追う立場になった鹿島が68分にいきなり4人を同時投入した直後、名古屋は木本恭生をピッチに送り出す。木本が入ったのは、最終ラインの手前。ダブルボランチを1列押し出して、フィルターをもう1枚足した格好だ。まるで、鹿島が中盤をひし形にした4-4-2に切り替えることを見越していたかのように、4-1-4-1のフォーメーションでふたをした。その意図はずばりと当たり、クロスのこぼれ球もしっかり名古屋が回収。危険な場面をつくらせなかった。

 活用した新戦力は、木本だけではない。前線の柿谷曜一朗である。

 天才肌のアタッカーにも守備のタスクを叩き込み、ベンチに下げることはしなかった。むしろ、その攻撃力が守りに入った時間帯に効いた。前がかりになる鹿島にとっては、カウンターの要注意人物となる。目論見どおりに82分、犬飼智也のファウルを誘発。2度目の警告で退場へと追い込んで、試合の行方を決定づけた。同じく交代出場していた齋藤学も、町田浩樹のイエローカードを伴うファウルを誘っている。新戦力は、しっかりチームに貢献していたのだ。

 5-4-1に切り替えて逃げ切った柏レイソル戦に続き、フィッカデンティ監督は新たな可能性を提示した。これで5試合連続無失点で、開幕6連勝。クラブ記録を伸ばし続ける名古屋は、まだ止まりそうもない。

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