■シーズン初ゴールは美しい“肩ヘディング”

 その大久保を、彼のプロキャリアのスタートとなったC大阪が獲得したという。C大阪はしっかりとした守備を植えつけて結果を出していたミゲル・アンヘル・ロティーナ監督とたもとを分かち、過去4回にわたって指揮をとってきたレヴィー・クルピを招聘していた。クルピには、若く才能ある選手を起用して奔放な攻撃サッカーをさせるイメージがあり、それも現在のJリーグのサッカーに合うのだろうかと不安視していたのだが、そこに大久保の獲得というニュースを聞き、大丈夫だろうかと思ったのだ。

 事実、その後伝わってくる大久保に関するニュースには、芳しいものはなかった。大久保は「プロ生活の最後を、デビューしたC大阪でプレーしたい」と考えており、クラブがそれに応える形になったとか、サポーターから大きな批判があったとか、クラブの統括部長が「ダメだったら1カ月でも2カ月でも引退」と言ったとか(後に撤回した)……。

 だが、早くも2月27日の第1節、大久保は柏レイソル戦(ヤンマースタジアム長居)のピッチに立った。C大阪は前線を4人で構成し、大久保は奧埜博亮と2トップを組んで先発したのだ。そしてピッチに立っただけでなく、またたく間に主役となった。

 前半15分、左サイドに走り出ながらロングパスを受けると、内側に切れ込んでペナルティーエリアの角から思い切りよくシュート。柏GKキム・スンギュに防がれたが、確実にゴールの左下隅をついたシュートには力があった。さらに34分にはDF丸橋祐介のロングパスに反応して突破しようとしたところを柏DF上島拓巳につかまれて倒れ、上島を退場に追い込む。

 そして42分、右サイドの崩しからDF松田陸が入れたクロスに対してニアポスト前に走り込み、鮮やかな「ヘディング」で叩きつけ、ゴール左隅に送り込んだ。実際には頭にはほとんど当たらす、肩に当たってゴールにはいったのだが、それでも昨年のルール改正で明確に「ここまではハンドではない」と示された部分でのシュート。文句のつけようがない得点だった。公式記録には「ヘディングS」となっているが、クロスに合わせて走り込むタイミングとスピード、ジャンプしての身のこなし、肩から放たれたボールの軌跡、すべての面で美しい得点だったのは間違いない。

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