サッカーで走るのは当たり前のことのはずだが、メッシは走らないことで有名だ。

 守備を免除される存在、という立場は、結果を出し続けて自分の過ごしやすい環境を手に入れる、という究極の境地とも言える。また、ペップ・グアルディオラ監督の言葉を借りれば「散歩しているようだが、あれは試合の全ての状況(相手の位置や動くのにかかる時間)を完璧に把握するためのもの」であり「だからボールを持った時に全てが分かっていて、試合を決めることができる」ことに繋がっている。

 そのメッシが走った。

 最前線で守備の起点となり、ゴールキーパーの位置まで何度もボールを追った。カウンターを受ければプレスバックもしてみせた。試合の状況を把握する戦術眼を持っているメッシは、守備のポイントを見つけることも上手かった。

 そして20分、メッシは直接フリーキックを相手が絶対に触れない完璧な場所に蹴り込み、バルセロナに先制点をもたらした。一斉にメッシに駆け寄るバルセロナの選手たちはスター揃いだが、その中心には唯一無二のスーパースターがいた。

 メッシが守備をしたことで、ウスマン・デンベレも見違えるほどの守備意識の高さを示した。2点目を奪ったアントワーヌ・グリーズマンは、メッシに寄った相手が空けるスペースをどんどん活用した。メッシの存在そのものが味方に影響を与える。ピボーテの位置でありながらビルドアップだけでなくサイドに動いたり突破したりとのびのびプレーし、新時代のバロンドーラ―になれる予感に満ち溢れているフレンキー・デ・ヨングは以前、ポジショニングの細かい修正をメッシが指示してくれていることを明かしている。

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