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メガクラブが巨体を揺らして闊歩する。それが世界のサッカーの趨勢だろう。欧州の強豪リーグは盟主ともいえる一部のクラブがタイトルを独占し、財力に劣るクラブは後塵を拝するばかり。ひるがえって、Jリーグでも序列化が進み、優勝の可能性は数クラブに限られてきた。これらの現象をどう見ればいいのか。その論考は、Jリーグ、大相撲にはじまって、プロ野球からアメリカン・スポーツ、さらに欧州のサッカーリーグと、縦横無尽に駆け巡る。
■アメリカ型スポーツの経営戦略
日本のプロ野球には「横綱」が存在するが、アメリカのメジャーリーグ・ベースボール(MLB)には「横綱」は存在しない。
MLBの全米選手権である「ワールドシリーズ」では、1998年から2000年にかけてニューヨーク・ヤンキースが3連覇して以来、連覇を達成したクラブは一つも存在しないのだ。日本のNPBがわずか12球団しかないのに比べて、MLBには30球団も存在するからでもあるが、これはアメリカのMLBの組織としての戦略によるものだ。
アメリカのプロ・スポーツでは「リーグ」全体の経営が重視される。
MLBが競争しなければならない相手はフットボールのNFLであり、バスケットボールのNBAであり、アイスホッケーのNHLだ。そこで、リーグ全体人気を高めるために、アメリカのプロ・スポーツでは「戦力均衡」が重要視される。
戦力を均衡させるための手段が、完全ウェーバー制の新人ドラフト制度(最下位球団から選手を指名していく)であり、サラリーキャップ制である。
つまり、ビジネスとしての側面が大きいアメリカのプロ・スポーツでは「リーグ戦を面白くするためには戦力均衡が必要」と信じられているのだ。
NFLの優勝決定戦「スーパーボウル」でも、ニューイングランド・ペイトリオッツが2004年、2005年に優勝して以来、連覇はない(2月7日に開催される第55回スーパーボウルではカンザスシティ・チーフスが連覇に挑む)。
ちなみに日本のプロ野球もドラフト制を採用しているが、ウェーバー制ではないので戦力均衡の手段にはなっていない。