■「ジャッジ・リプレイ」で見えてきたこと
そしてワールドカップ後、世界の多くの国でVARが導入された。当初は「サッカーの魅力を殺す」など酷評していた監督たちも、1シーズン、2シーズンたつとあまり不満を言わなくなった。だがそれはVARの運用が軌道に乗り、誰もが望む「誤審のない試合」が実現されたからではない。監督たちが「不満を言っても始まらない」と、あきらめの境地に達してしまったことが、ニュースにならなくなったいちばんの要因だ。
Jリーグの全試合を中継しているネット放送局の「DAZN(ダゾーン)」では、Jリーグのシーズンオフを利用して、プレミアリーグのVAR判定を取りあげる「ジャッジ・リプレイ」を放送している。Jリーグでも2020シーズンからJ1の全試合でVARを導入する予定だったが、2月に開催された第1節の9試合で実施されただけで、コロナ禍による中断が明けた7月以降は実施を見送った。しかしことし2月下旬に開幕する2021シーズンでは、全38節、380試合で実施すべく準備が進められている。DAZNの「ジャッジ・リプレイ」は、ファンにVARの理解を深めてもらおうという狙いで放映されているのだ。
だが、これまでの4回の放送を見る限り、プレミアリーグのVARは熟成されたわけではなく、逆に混乱が深まっているのではないかと感じられてならない。とくにハンドの判定については、VARによって完全に手に当たったかどうかの「事実」だけの問題のようになった観がある。