■タンカにもさまざまなタイプがある
通常、スタジアムで使われているタンカは、長さ2メートル半、幅60センチほどのしっかりした2本の棒の間にじょうぶな帆布を張り渡し、帆布の裏側には開いた状態を保つための金属製の棒と、その下に高さを10数センチに保つ足(グラウンドがぬれている場合を考慮したものだ)がついている。使用しないときには、金属製の棒を折りたたむ。
前述したように、基本的には競技場の備品であるが、けっして安いものではない。医療用には、「使い捨て」の安価なもの(感染症患者の搬送などに使われる)もあるが、一般に競技場で多く使われているタイプのものは数万円する。
日本の競技場ではおおむね「帆布製」のタンカが使われているが、外国のサッカーを見ていると、さまざまなタンカがあるのに気づく。強化プラスチックでつくったバスケット型のもの、パイプで組んだ外枠に粗い編み目のナイロン生地を組み合わせたもの、選手がはみ出してしまいそうな小さなもの……。タンカを載せる電動のカートがピッチにはいってくるところもある。日本では若者が4人できびきびと運ぶが、海外ではでっぷりと太ったおじさんが2人でよっこいしょと運ぶというとことも多い。
私が監督を務めている女子の東京リーグの試合では、グラウンドに備え付けのタンカがなく、選手のひとりがひざを痛めて動くことができなくなったとき、倉庫から「リヤカー」を引っ張り出してきてそれに乗せて搬送したのを見たことがある。そんな便利なものもなく、ベンチに乗せて運んだこともある。