『世界スタジアム物語 競技場の誕生と紡がれる物語』(ミネルヴァ書房刊)という著作をもつ後藤健生さんが、今年オープンしたスタジアムを訪れて大きな満足を覚えたという。京都府亀岡市にできたサンガスタジアムのどこが、世界のサッカー場を知る筆者にそれほどの思いを抱かせたのだろう。観戦しやすいスタジアムの条件とは。そして、日本のスタジアムのレベルはいま、どのあたりにあるのか―。
■ キックオフの時間が迫る!
僕には何度も繰り返して見る“悪夢”がある。若い時からずっと、ほとんど同じ内容の夢を年に2、3回ずつは繰り返し見ているのだ。
それは、スタジアムに行った時の夢だ。
さて、いよいよ試合が始まろうとしているその時、ふと気付くと、僕が座っているその席からはピッチがよく見えないのだ。太い柱や梁があって半分隠れているとか、前列に座っている人たちの頭や背中が邪魔になっているとか、原因は千差万別なのだが、とにかくピッチが見えない。そこで、スタジアム中を歩き回って、他に良い席がないかと探し回るのだが、ちゃんと試合が見える席はどうしても見つからない……。
そして、そうこうしているうちに試合開始のホイッスルが聞こえて来るというわけだ。僕にとっては、それが最悪の夢というわけである。
ピッチがまるで見えない……。そんなスタジアムは現実にあるわけではない。だが、それに近い体験をすることはある……。
陸上競技場なのでピッチが遠くてよく見えないとか、座っている位置が低すぎて俯瞰的に見ることができないのでフラストレーションが溜まるとか、そんなスタジアムは実際にいくつも存在する。
とにかく、僕にとって、せっかく会場に行ったのに試合がちゃんと見えないというのは苦痛でしかないわけである。