■20歳前後の優秀な選手たちに注目
なでしこリーグの競技レベルは間違いなく上がっている。少なくとも、上位「3強+1」の試合であれば、入場料を払って見に行ってもけっして損はしない(もちろん、入場料の額にもよるが)。
かつて、日本がワールドカップで優勝した頃に比べても、リーグ戦のレベルは間違いなく上がっている。
当時は、日本代表に選ばれた一握りの選手と、その他の選手の差が大きかった。そのため上位チームと下位チームの差が大きく、下位チームにははっきり言ってどうしようもなく下手な選手もいた。しかも、ここ数年は日テレ・ベレーザの力が圧倒的で優勝争いとしての面白みにも欠けた。
だが、現在は選手層が大幅に拡大した。1部の下位チームはもちろん、2部リーグでも上位チームは非常に良い内容のサッカーをしている(昇格したばかりのC大阪堺の健闘がそれを証明している)。
日本は、一昨年2018年にフランスで開催されたU-20女子ワールドカップで圧倒的な強さを発揮して優勝している。その世代の選手たちが、今はすべてのチームでレギュラーとして活躍している。「その世代の」というのは、当時、代表に選出されなかった選手も含めて、20歳前後の優秀な選手が多いという意味である。
男子でも、そうした段階を踏んで日本のサッカーは発展してきた。
「一握りの代表選手」が突出していたのは、メキシコ・オリンピックで銅メダルを獲得した1960年代のことだ。地元開催の東京大会のためにカネと時間をかけて、また西ドイツ代表レベルのデットマール・クラマーコーチの指導を受けて、一握りの代表は強化された。
そして、東京大会終了後もメキシコ大会までの4年間、ほとんどメンバーを変更せずに、毎年ヨーロッパ遠征をしながら強化を続けたのだ。日本サッカーリーグ(JSL)に参加しているだけでは、一部の日系ブラジル人選手を除いて外国人選手とプレーする機会などなかった時代だ。代表選手とその他の差は大きく開いていた。
実際、代表監督だった長沼健氏から「代表選手は、一目で代表だと分かるようなプレーをしなければいけない」と言われていたのだ。
だが、東京、メキシコを戦った一部の選手が引退すると、日本のレベルは急激に低下し、オリンピックもワールドカップも縁遠くなってしまったのだ。