■「取る側の要因」と「取られる側の要因」

 Jリーグでは、8月8日の第8節に浦和レッズ名古屋グランパスに前半だけで5点を許すという試合があった。このときの浦和は、前半10分までに2点を許したところで、守備を締め直すのか、リスクを冒して出ていくのか、チーム内で統一が取れず、ばらばらになってしまった。その結果が、前半45分で5失点という惨状につながった。

 ブラジルとバルセロナの場合には、パニックが起こったわけではなく、チーム全体が魅入られるように無防備になってしまった。そこに、ドイツ代表、バイエルン・ミュンヘンの「相手が二度とサッカーなどしたくなくなるように叩きのめす」というメンタリティーと、攻撃の恐るべき効率性が襲いかかってきたのだ。

 得点が生まれにくい競技であるサッカーで、しかも力が均衡しているチーム同士の対戦における「大量得点」は、必ず、取る側と取られる側、双方の要因がぴったりと合わさるようにはまることで起こる。どちらか一方の要因だけでは生まれないし、双方の要因が少しでもずれれば成り立たない。それは、自由に動いていた「分子」同士がある規則性をもって互いに結びつき、あっという間に「結晶」をつくり出していくような現象にたとえられるかもしれない。

 あるいはまた、異質な分子同士がその化学的性質によって結びつき、まったく違う性質をもった物質が生まれることがある。これを「化学反応」または「化学変化」と呼ぶが、「大量得点」も、得点を重ねる側と失点を重ねる側両方の要因がぴったりと重なったときに、思いもかけない結果として生まれるものなのだ。

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