大住良之の「この世界のコーナーエリアから」 第19回「サッカースタジアムの最重要ポイント」の画像
アリアンツアレーナでは、トイレでPK戦の作戦を練ることができる。(c)Y.Osumi
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世界中のさまざまな場所で、熱心に研究してきた。でも、圧倒的な回数の実験をしても、全体の半数しか研究しきれないのである。――今回の大住さんは、ハイブラウな研究のご報告。

■ホテルはいつでもツインルーム

「まるで犬だね」

 10年ほど前まで、私の海外出張といえばいつもカメラマンの今井恭司さんといっしょだった。今井さんとは互いにまったく気遣う必要のない仲で、ホテルも2人でツインルームに泊まるのが常だった。ホテルの宿泊費はシングルでもツインでも大差がなく、2人で折半すれば5つ星ホテルに宿泊しても格安だったからだ。そうしたなか、ホテルに到着するたびに、私は今井さんに「犬のようだ」と笑われた。部屋にはいると、私は決まってまずトイレに行き、「小」のほうをするからだ。犬が電信柱ごとに後ろの片足を上げて「なわばり」を示すために行う「マーキング」のようだと言うのだ。

 自慢できる話ではないが、私はトイレがとても近い。頻繁にトイレに行くので、窓から外を見るのが大好きなのに、長時間の飛行のときにはけっして窓側には座らない。必ず通路側の席を選び、しかも選べるなら最後列、トイレに近いところにする。ときどき、親切なキャビンアテンダントが「ここはトイレのすぐ横ですので、別の席をご用意しましょうか」などと言ってくれるが、丁重にお礼を言ってお断りする。私にとっては、トイレの横の通路側こそ、最高の席なのである。

 そんな私だから、トイレは、スタジアムのなかでも、とても気になるところだ。どこにあるのか、記者席からすぐに行けるか、数は十分か、動線はスムーズか、そして清潔か……。一般に、現在のJリーグのスタジアムでは男性用トイレは十分にあり、とても清潔なので、あまり不満はない。しかし海外のスタジアムには実にさまざまなトイレがあり、困惑することも少なくない。

 今回はトイレの話である。ただ、当然のことながら、私の「スタジアム・トイレ研究」は男性用のものに限られている。最近は、ついうっかりふらふらと女子トイレに足を踏み入れ、ドアがずらりと並んでいるのに気づいて、あわてて出ることもないわけではないが、女性用トイレで用を足したことは一度もない、はずだ……。

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