7月8日に行われたJ1第3節。柏のホームでの「柏対横浜FC」は、前年はJ2で対決した2チームの一戦となった。
■“師匠”ネルシーニョを采配で振りまわす
横浜FC13年ぶりのJ1勝利は、下平隆宏監督にとっても会心の勝利になったはずだ。というのも、対戦した柏レイソルは自らの古巣。選手、指導者として、実に四半世紀以上を過ごしたチームだからだ。
柏の指揮官ネルシーニョは、彼にとって師匠筋にあたる。
ネルシーニョは自身の第一期政権時、U-18のコーチ、監督を務めた下平について、「“シモ”はU-18の監督をしていたときも、組織的な良いチームをつくっていた」と述べている。
試合は、タレントに恵まれる柏が地力の違いを見せつけるかと思われたが、そんな見立てを下平監督はあっさりと覆した。
ポイントとなったのは、サイドでの攻防だ。
3バックの横浜はマイボールの時間、右のマギーニョ、左の志知というウイングバックが後ろでの組み立てには顔を出さず、高い位置に陣取る。
これが好手となった。
対するネルシーニョは、相手の布陣にしっかりと対応する監督。 左の瀬川を下げることで枚数を合わせ、後方の安全を確保したが、これによって柏は5バックになってしまった。
後方が重くなり、当然、前からのプレッシャーがかけにくい。
こうなると下平監督が中断期間に煮詰めてきた、後ろからのビルドアップが生きてくる。
柏がボールを取りに来ても、GK六反と3バックは勇気をもって最後尾からパスをつないでいき、相手のプレッシャーをやり過ごす。
「自分たちでポゼッションしていくんだよ! 逃げるな!逃げるな!」
最後尾から盛んに激を飛ばすGK六反の声に、フィールドの10人は応え、確実にパスをつなぎ、高く張り出すウイングを生かしながら敵陣に攻め入った。
この横浜のリズムは最後まで崩れなかった。
もちろんネルシーニョもただ手をこまねいて、戦況を見つめていたわけではない。
前半から早々と交代カードを切り、中盤から前の顔ぶれ、形を変えることで、横浜にプレッシャーをかけようとしたが、リードされた焦りも加わり、最後まで正解を見出すことができなかった。
思い通りのゲームができないことで選手たちは集中力を失い、そのことが失点にもつながった。