■選手層が厚く、ポゼッション型のクラブが有利

 世界的に、新型コロナウイルスの影響によって富める者と富まざる者の間の格差はさらに広がっており、貧困層や難民など社会的弱者が感染症に苦しめられている。

 Jリーグでの争いも同じだ。猛暑の中の連戦となることで選手層の薄い“富まざるチーム”が消耗していくのは目に見えている。順位争いで上位に踏みとどまることができるのは、選手層が厚く、ローテーションしながら連戦をこなすことのできるチームだけだ。そして、暑さという条件を考えれば、走力に頼るのではなく、ボールを保持する時間を長くして相手を走らすことの上手いポゼッション型のチームが有利になる。

 2つの条件を満たすチームといえば、まず思い浮かぶのが川崎フロンターレだ。

 ボールを持ったらけっして攻め急ぐことなくテンポ良くボールを回し続け、相手の守備陣に穴を見出した瞬間に攻撃のスイッチを入れるのが彼らのスタイルだ。相手チームは、川崎のボール回しに対応することで着実に体力を奪われる。

 川崎は3連覇を狙った昨シーズンは4位に終わった。勝ち切れる試合を引き分けに持ち込まれたり、試合終盤に失点して勝点1を失ったりと試合運びにも問題があったが、負傷者続出でフルメンバーで戦えない試合も多かった。

 ただ、そうした中でメンバーが変わっても、内容のある試合を続けてきたことも間違いない。複数ポジションをこなせる選手も多く、最前線から最終ラインまで穴のあるポジションは少ない。しかも、今季は関東大学リーグを代表するアタッカーだった旗手怜央と三苫薫が入団。小林悠の離脱というニュースがあっても隙を感じさせないだけの層の厚さがある。

 日本を代表する天才パサーの中村憲剛は間もなく40歳を迎え、フル出場は期待できないが、MF陣は大島僚太田中碧守田英正、脇坂泰斗と多士済々。重要なポイントで憲剛を切り札として起用することができる。

 昨年の後半、急速に完成度を上げ、天皇杯でクラブ創設以来の初タイトルを獲得したヴィッセル神戸もポゼッション・スタイルで暑さを乗り切ろうとしている。

 昨年はシーズンを通じて好調を維持したアンドレス・イニエスタだが、やはり日本の酷暑の中でフルに活躍することは難しいだろう。鍵を握るのはセルジ・サンペール、山口蛍といった選手がどこまでイニエスタをサポートできるかだ。心強いのは、酒井高徳もハンブルガーSV時代にはMFとして起用された経験があること、そして西大伍も実は攻撃的MFとしての能力が高い選手であることだ。

 ザーゴ新監督の下、ビルドアップのスタイルを志向していると言われている鹿島アントラーズや、ショートカウンターのサッカーにポゼッション・スタイルを取り入れていこうとしているサンフレッチェ広島も、その新しいスタイルに適応できれば注目すべきかもしれない。なにしろ、広島には森保一監督時代にポゼッション志向のスタイルで戦ってきた当時のメンバーも数多く残っているのだ。

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