渡邉  キャンプで2つのチームを見て、細かく落とし込むことの必要性は強く感じましたね。さっきテル君が言ったみたいに、世界でトップのヨーロッパの、さらにその中でトップのスペインの当時トップのクラブが、そういう細かいことを型にハメつつやっている。現代サッカーの戦術の細かさを考えると、練習でかなり落とし込まなければいけないんだろうなと。

 いろいろ見てきた他のチームの練習でも、強いチームは、相手のプレスが中からはこう来るから、こうやってっていうのを5パターンぐらい一気にやるんです。コーチとかトレーナーとかが一生懸命プレッシングして再現しながら。練習の段階でゲームレベルの形にしつつ、しかも、とにかく細かくしてやらないと、実際の試合で選手が反応できないし、ましてや、それを連動させるとなるとね。“相手役”は実際の人間じゃなくて人形でもいいんだけど、とにかく練習から試合を想定させることをしなきゃいけない。

 

岩本  たしかに、人形があったほうがいいよね。鹿島とかレイソルに7点取って勝ってたような、すごい強かったときのベルマーレも、人形を置いてやってたよね。サイドバックがここに入ってきたら、その瞬間にこの選手がここに流れる、とかを、週に2回はやってたよ。Jリーグの選手はみんなうまいからある程度はできるんだけど、相手も強いじゃない。そういうときに、一定度はパターン化しておくと楽だよ。行き当たりバッタリで点が入るときもあるんだけど、形を作っていたほうが選手は分かりやすい。「あ、ここからサイドチェンジだな」って、全員が理解しているほうが、チームとしてそれに向けた一体的な動きができる。

渡邉  現代サッカーって、どうしてもスペースがない。その中でスピード感を持って相手を崩すとなると、相手を見て判断するなんて時間はもうない。こうなったらこうって、自然と体が動くようなややオートマティックっぽいことはいくつかやっておかないと、なかなか難しい。それをやりながら相手の変化を見ていくことで、“今までだったらこういうやり方だったけど、今回はこういうやり方もあるんだ”って対応できるのが理想で、それを続けることで、チームとしての積み上げがどんどん高くなっていくと思うんです。
 そのベースのところ、つまり、そもそものチームの型というか、スタイルみたいなのを本当に細かく落とし込まなければいけない。守備の部分ではそれが当たり前にあるんだけど、日本だと、攻撃はある程度の自由がある。でも、監督をやっていて、実際には攻撃のほうがそういうパターンやポジションの取り方、崩し方を持っておかなきゃいけないなとはすごく感じました。相手が戦術を持って守りを固める中で、11人でどうやって崩していくかは、ゼロからいきなりはできない。

岩本  現代サッカーは11人全員で崩さなければいけない。たとえばバルセロナだって、マンツーマンではめられるときがあるんですよ。そうすると、攻撃不全になることだってある。そういうときに、あのチームはセンターバックがドリブルをしてくるんだよね。ナベ監督もセンターバックだから分かると思うけどさ、マンツーの状態でセンターバックがボールを前に運ぶのはきついじゃん。ゾーンでゆるいチームが相手だったら少しは行けるかもしれないけど。

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