トランプ米大統領の政治介入により、レッドカードを受けたアメリカ代表選手が特例で出場可能となった「バログン問題」。この歴史的汚点が世界中で大バッシングを浴びている背景には、現代サッカーを“富裕層の祭典”へと変貌させたFIFAへの巨大な不満が渦巻いていた。テレビCMの枠を確保するための不自然な試合中断、ダイナミックプライシングによるチケット価格の異常な吊り上げ……。サッカージャーナリスト・後藤健生が、ファンを置き去りにして暴走する「金儲け第一主義」のインファンティーノ体制の闇を暴く。(全2回/第2回)
■ 猛ブーイングの的「ハイドレーション・ブレイク」に隠されたCM枠の罠
ベルギーなど各国協会やUEFAなどからの批判に加えて、この“事件”は世界各国で大きく報じられることとなった。
日本のサッカー専門メディア以外でも「バログン問題」は大きく取り上げられ、僕のところにもコメントを求める電話が何本かかかってきた。
アメリカ以外ではそれほど注目度の高くないバログンという選手の処分が、各国メディアでこれほど大きく扱われたというのは、インファンティーノ会長にしてみれば誤算だったのだろう。
この問題が大きく取り上げられたことの背景には、現在のインファンティーノ体制下のFIFAのやり方を巡ってくすぶっていた不満がある。
各地で観戦していると、前後半の23分前後に取られる「ハイドレーション・ブレイク」の度に、スタンドからは大きなブーイングが聞えてくる。
2026年のワールドカップの試合では、前後半に3分の休憩が入り、サッカーがまるでクォーター制になってしまったかのように感じられる。
FIFAは「暑熱対策」の一環として「ブレイク」を導入したのだが、高温に見舞われたアメリカ南部や東海岸だけでなく、比較的過ごしやすいカリフォルニア州や太平洋岸北部のシアトルやカナダのバンクーバー、あるいはダラスやヒューストンのように屋根が閉じられて空調で快適な気温に保たれている会場でも一律に「ハイドレーション・ブレイク」が取られるのだ。
「公平のため」だそうである。
だが、この「ブレイク」には、試合を放映するテレビ局や配信事業者が広告(CM)を入れやすくするためのものではないかという疑惑が付きまとっている。
実際、日本でも民放各局の中継やDAZNの配信では「ブレイク」の間にしっかりとCMが流されている。
アメリカのメジャースポーツはテレビ局からの巨額な放映権に支えられて発展してきた。その分、テレビ局は放映に都合が良いようにスポーツのルール自体も変えてきた歴史がある。
テニスにはタイブレーク制が導入されて試合時間が長くなることが少なくなった。ゴルフはマッチプレーではどのホールで決着がつくか分からないので、ストローク制に変更されて最終ホールを中心に中継すればいいようになった。バスケットボールはかつては前後半制だったが、CMを入れやすいようにクォーター制となった。
1970年代にアメリカで人気を集めた北米サッカーリーグ(NASL)でも、クォーター制が導入されたことがあった。
だから、アメリカで開催される大会でFIFAが「ハイドレーション・ブレイク」を導入することを決めた時、誰もがアメリカの放送局の利益のためのルール変更だと感じたのである。
そして、継続性を重視するサッカーの伝統を大切にするヨーロッパの人たちを中心として「ハイドレーション・ブレイク」に対する反感が強く、スタジアムでのブーイングにつながっているのだ。




































