■19世紀のアルゼンチンを知る

 ハドソンの両親は北アメリカのニュー・イングランド地方(マサチューセッツ州などがある地方)の人でしたが、父親が病気で気候の良い南米アルゼンチンのパンパスに移住し、ハドソン自身はそこで1841年に生まれたそうです。

 そして、ハドソンは1874年に英国に渡り、そこで文筆活動を営み、1922年に81歳で亡くなるのですが、70歳を過ぎて病気になった時にアルゼンチンのパンパスで過ごした子ども時代の記憶を鮮明に思い出し、それを書き綴ったのが『はるかな国 とおい昔』(Far Away and Long Ago)という本でした(「訳者のあとがき」による)。

 ハドソンは博物学者で鳥類が専門だったので、子どもの頃にパンパスで見たさまざまな動物や鳥、植物の描写が中心ですが、同時に当時パンパスに住んでいた荒くれ者のガウチョ(牛飼い)たちやスペイン系の没落した大地主、あるいは英語を話す英国系の隣人たちのことも克明に描かれています(アルゼンチン共和国はスペインとの独立戦争を経て1816年に独立しましたが、その後、経済的には英国に支配されていました)。

 また、独立直後にはブラジルとの戦争や独裁政権の腐敗があったりと、不安定な現地事情についても描かれています。

 今回“出土”した本の奥付を見ると、1979年発行の第22刷となっています。

 1978年にワールドカップを観戦するために僕は南米大陸に渡り、アルゼンチンで約1か月を過ごしました。で、アルゼンチンのことがすっかり気に入った僕が、「そういえば、父親の愛読書にアルゼンチンのことを書いた本があったなぁ」と思い出して、それでこの本を買ってきたのに違いありません。

 もう、48年も昔のこと、僕にとってもアルゼンチンは「とおい昔」の記憶の中にある国なのです(もっとも、その後、2011年までに7回も訪れているのですが……)。

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