シュート計27本でスコアレスドロー!スキッベ監督も自賛した「Jリーグの中でもトップのゲーム」との違い【天皇杯準決勝で表面化「日本サッカー」今そこにある危機】(2)の画像
柏レイソルとサンフレッチェ広島による今季J1第36節は、「パッション」にあふれていた。撮影/原壮史(Sony α1使用)

 勝てば官軍。この言葉を、サッカーの試合に当てはめてもよいものか。日本サッカーは現在、岐路に立たされている。サッカージャーナリスト後藤健生が延長戦を含めて120分の激戦となった今年の天皇杯準決勝と、その周辺から日本のサッカー界の「危機」に警鐘を鳴らす!

■ミス連発の5対4よりも「0対0」

 サッカーという競技は、もともと点が入りにくいスポーツだ。イタリアでは「両チームが完璧な試合をしたら、結果は0対0になる」と言われているくらいである。

 なぜ、サッカーでは点が入りにくいのか? 兄弟スポーツであるラグビーと比べてみよう。ラグビーは前方へのパスを使わずにボールを前に進める競技である。そして、前に前にと進んでいってゴールラインを越えてボールをタッチダウンすれば「トライ」が成立して得点(5点)が入る。前に出るだけでいいのである。

 だが、サッカーではボールを前に進めるだけでは点にならない。相手ゴール近くまでボールを運んだうえで、手が使えるGKに加えて複数のDFが守るゴールの枠にボールを入れるという、「前に運ぶ」とは異質な作業を成功させなければいけないのだ。サッカーのゴールの「枠」はクロスバーの下だから、相手が立っているだけでシュートはブロックされてしまう。

 閑話休題。

 僕は守備的な試合や0対0の試合はけっして嫌いではない。両チームの守備陣がミスを連発して5対4になるような試合よりも、0対0のほうがよほど締まった内容の試合だと思う。

 ちなみに、野球を見るときも、僕は「乱打戦」よりも「投手戦」のほうが好きだ。たとえば、ワールドシリーズ第2戦のドジャース山本由伸とケビン・ガウスマンの投げ合いのような……。

 これは、もちろん「人の好みの問題」だ。

 だが、僕が好きなのは両チームが積極的に攻め合って、それを守備陣やGKが頑張って失点を阻止する、そんな試合である。

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