■勝つためには「手段を選ばない」
町田は1989年に創設された新興クラブである。関東リーグ参入が2006年。2009年に日本フットボールリーグ(JFL)入りを果たして、2012年に初めてJ3リーグを戦い、その後、J3からJ2に上がっていた。
その町田に大躍進をもたらしたのが一昨年、監督に就任した黒田剛だった。勝敗への執着心が非常に強い指導者であり、勝つためには手段を選ばない戦い方には賛否両論が渦巻いている。
守備の強度を高めてプレスをかけ続けるのだが、必ずしも「ハイプレス」にはこだわらない。流れによってはミドルブロック、そしてリトリートと守りに徹するし、必要とあればファウルをしてでも止めてしまうし、ボールをタッチに蹴り出したりして試合の流れを断ち切ることも辞さない。当然、アクチュアル・プレーイングタイム(APT)は長くはならない。
攻撃ではセットプレーが大きな武器。そして、そのセットプレーの一つとしてロングスローを多用するのだ。
現在では左のウィングバックに入る林幸多郎がスローインを担当しているが、右サイドでのスローインの場面になると、林がピッチを横切って駆けつけて、ライン沿いに置いてあるタオルでしっかりとボールを拭いてからスローイングに入るので、試合再開までには長い時間を要することになる。
レフェリーが早くボールを入れるように指示することはあるが、そこで罰則が加えられることはない。
ロングスローというサッカーの本質から外れた技術を使った攻撃を多用することはサッカーの進歩にもつながらないし、APTも短くなってしまう。
弱者が強豪チームに対抗するための手段としては「ロングスローもあり」だと思うが、町田は今では多くの代表クラスをそろえ、リーグ優勝を目指そうという強豪の一角。いつまでもロングスローを多用するのはどうかと思う。