■ワンダーボーイから「世界のアイドル」へ

 ペレはサントスFCで15歳のときにデビューし、「ワンダーボーイ」と言われていた。16歳でサントスのレギュラーになると、10番をつけてプレーすることが多かった。「左のインサイドフォワード」、「第2ストライカー」の役割だった。

 しかし、1958年ワールドカップでの「10番」は、まったくの偶然だったのである。

 大会前の小さなケガにより、ペレはオーストリア戦(3-0)、イングランド戦(0-0)では出番がなかった。しかし第3戦、フェオラ監督は前の2試合ではかばかしい活躍ができなかったマッゾーラ(後にイタリアのACミランユベントスでスターとなったジョゼ・アルタフィニ)を外し、ペレを起用した。

 この試合では得点のなかったペレだったが、準々決勝のウェールズ戦(1-0)では決勝点をマーク、準決勝のフランス戦(5-2)ではハットトリックの活躍でブラジルを初めてのワールドカップ決勝進出に導いてしまう(1950年大会の決勝リーグ最終戦は事実上の決勝戦だったが…)。そして決勝戦でも、スウェーデンを手玉に取る2点を決め、5-2の勝利でブラジルに初優勝をもたらすのである。

 ペレは「ワンダーボーイ」から「サッカーの王様」となり、世界のアイドルとなる。そしてペレの栄光が、「背番号10」に特別な意味を与えていくのである。

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