
サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム。今回は、MEN IN BLACK。
■キャプテンが「反則」を宣言
さて、FA(フットボール・アソシエーション)誕生前夜、フットボールの対外試合をしようとしたら、まず両チームのキャプテンが協議して試合で使うルールを決めることから始めなければならなかった。どんなボールを使うのか、1チームの人数、試合時間、ピッチの大きさ…。あらゆることを決めなければ、試合ができなかったのである。ときには、前半をのちのサッカーに近い形で、そして後半をラグビー校スタイルの試合にすることもあったという。
そして試合になると、キャプテンは絶大な権利を与えられていた。誰をプレーさせるかだけでなく、試合中に起こる出来事に判定を下すのも、両キャプテンの仕事だった。
パブリックスクールで厳格な教育を受け、その後、大学生活を通じて英国のリーダーとなるべく自己を磨いてきたプレーヤーたちは、全員がジェントルマンの「はず」だった。ルールを守るのが当然だった。しかし、もちろん、勢い余ってのファウルや、つい反則を犯してしまうこともある。そんなときには、自チームのキャプテンが反則を宣言するのである。意図的な規則違反など悪質な場合には、自チームの選手に退場を命じることもあった。
だが、しばらくするとこの方法では収拾がつかなくなる。とくにゴールを割ったかどうか、きわどいときの判定は、チームの中で懸命にプレーしているキャプテンには至難の業だったからだ。そこで両チームのキャプテンは試合前にそれぞれ1人を「アンパイア」を指名し、この2人が2つのゴールの横に立って判定をするようになる。