
サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム。今回は、MEN IN BLACK。
■ゴールキーパーは「ルール違反」
初めてその「異様」な光景に出合ったのは、数年前だっただろうか。Jリーグのある試合で、試合前に整列した両チームを見ると、一方のチームのゴールキーパー(GK)と審判4人がまったく同じ黄色いシャツを着ていたのだ。ただ、「異様」と感じたのは、重箱の隅をほじくり返す私だけだったかもしれない。誰も話題にはしなかった。
「それぞれのゴールキーパーは、他の競技者、審判員と区別できる色の服装を着用しなければならない」
ルール第4条第3項に、このような記述がある。ということは、黄色いシャツを着ていたゴールキーパーは明らかなルール違反で、違う色に着替えなければ試合に参加できないことになる。GKがいなければ試合はできないから、このままなら試合は成り立たないことになる。
ところが、それが一度や二度ではなかったのだ。GKのウエアと審判員のシャツの色に注目して見ると、あちこちの試合で同じ事態になっていた。私はJリーグの運営担当と日本サッカー協会の審判委員会に改めるべきであると申し入れたが、何年たっても事態はまったく改善されていない。
その試合を見ながら、ある記者仲間がいった。
「審判員が黒を着ればすむ話じゃないか」―。
まったく、そのとおりなのである。サッカーの審判員の基本は「黒」であり、黒いシャツ、黒いパンツ、そして黒いストッキングと決まっている。
日本サッカー協会の「ユニフォーム規定(2025年4月17日改正)」には、第4条に「ユニフォームのうちシャツの色彩は、審判員が通常着用する黒色と明確に判別し得るものでなければならない」と規定されている。すなわち、チーム登録する際に、黒や濃紺のシャツは認められないのである。ただ、第10条にこの規定の例外として、Jリーグ、JFL、WEリーグ、なでしこリーグ、そして男女のFリーグが挙げられており、Jリーグでときおり真っ黒なウエアを見るのは、この例外措置のおかげなのである。