■堪能した「自然の大スペクタクル」

 私の実家は神奈川県横須賀市の久里浜という東京湾に面した町にあり、その南端の神社に続く高まりに位置していた。私の家のすぐ南隣は、海を埋め立てた広大な東京電力横須賀火力発電所の敷地だった。といっても、火力発電所ができたのは私が小学生のときだった。幼い頃には、埋立地ができる場所にあった磯で貝やウニなどをとって遊んだ記憶がある。

 火力発電所は埋立地の先端に近いところに建てられ、「隣」とはいえ、私の家との間には広大な敷地が広がっていた。家の2階の南側に面した私の部屋からは、その広大な敷地と発電所の巨大な建物群、そして180メートルもの高さを持った8本の煙突が、まるで「パノラマ」のように見えた。右側からは小高い山が迫り、その山がかつて海に落ちていたところから広がる発電所が広がっている。

 年に何回か、そこが素晴らしい「大自然ショー」になる。もちろん落雷である。私は雨戸をすべて開け、風向きがよければガラス戸も開け、その大スペクタクルを堪能した。広大な空を引き裂いて、ときに何本も稲妻が走る。発電所の建物がパッと浮かび上がると、ほんの数秒で腹に響くような轟音が襲いかかる。

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