大住良之の「この世界のコーナーエリアから」第168回「もうひとつの生命の危険」(3)奈良の中高では「最初の一撃」が校庭に、活用したい「気象庁のアプリ」、優先してはならない「コーチのエゴ」の画像
2024年の欧州選手権でも、突然の雷雨で試合が中断するアクシデントが…。こぶし大の雹(ひょう)も降った。撮影/原悦生(Sony α1使用)

 サッカーは無数のディテール(詳細)であふれている。サッカージャーナリスト大住良之による、重箱の隅をつつくような「超マニアックコラム」。今回のテーマは、サッカーにおける「もうひとつの生命の危険」。そう、「猛暑」だけがサッカー関係者の生命を脅かすわけではないのだ。

■「雷ナウキャスト」で早めの対応

 日本でも、今年4月に、奈良の私立中高でサッカー部を含む部活中に校庭で落雷事故が起こり、2人が意識不明になる重傷を負うという出来事があった。1人は数日後に意識を取り戻したが、1人はまだ意識不明のままだという。このときには雷鳴が聞こえたわけではなく、最初の一撃が校庭を襲ったらしい。

 アメリカ政府の指針も日本サッカー協会の指針も、雷鳴や遠くの稲光だけでなく、雷雨が起こりそうなときにはしっかり情報を確認することが大事であるとしている。「雷注意報」が出ていたら、こまめに情報をチェックし、雷雲が近づいているのなら早めの対応が必要だ。今は気象庁の「雷ナウキャスト」というアプリがあり、かなり正確にリアルタイムの雷雲の情報を知ることができる。

 落雷に対する怖がり方は、人によって大きく違う。ゴロゴロと聞こえただけでお腹を押さえて逃げ出す人もいれば、空全体が明るくなるような稲光を見ても平然としている人もいる。

 白状するが、私は完全に後者の部類である。これはけっしていいことではないが、落雷を怖いと思ったことはあまりない。その理由は、10代の頃の経験による。

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