後藤健生の「蹴球放浪記」第267回「中東に乗っ取られてしまったIFFHS」の巻(1)「各国サッカー史」を刊行するはずが…「最優秀〇〇」を選ぶ投票&表彰式がメインにの画像
2009年に世界得点王に選ばれた岡崎慎司(清水)にIFFHSからトロフィー贈呈。右は原博実技術委員長(当時)。左は筆者。提供/後藤健生

 現在、潤沢なオイルマネーを背景に、サッカー界で意見を強める中東諸国。蹴球放浪家・後藤健生が所属していた真面目な組織も、いつの間にか、その支配下に置かれていたという。静かに忍び寄る「長い手」に、蹴球放浪家が警鐘を鳴らす!

■「IFFHS」メンバーに

「IFFHS」という組織をご存じでしょうか?

 僕はメンバーだった当時、「国際サッカー歴史記録学会」という訳語を使っていましたが、現在では「国際サッカー歴史統計連盟」と直訳に近い言葉が使われているようです。

 アルフレード・ペーゲ博士によって1984年に東ドイツのライプツィヒで発足した組織です。

 僕がペーゲ博士から初めて手紙をもらったのは1990年代前半だったと思います。『ワールドサッカー』誌など、僕が海外雑誌にも簡単な記事を書いていたのでコンタクトしてきたのでしょう。

 ペーゲ博士は1985年に政府の許可を得て西ドイツに移住。最初はヴィスバーデン、その後はボンに居を構え、自宅がIFFHSの事務局になっていました。

 蹴球放浪記「半密室内での一期一会」の巻でも東ドイツからの夜行列車の中で出会った東ドイツ人のことを書きましたが、合法的に西側に移住した人もいるのです。

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