■決めたのは「マンC育ち」

 会場はロンドンの東近郊にある「ホーンチャーチ・スタジアム」という小さな陸上競技場である。自治体所有で、ホーンチャーチFCのホームとなっている。ピッチの大きさが公表されていないため、コウルソンのゴールの正確な距離はわからないが、Google Mapで見ると縦100メートル前後のようで、蹴ったのがペナルティーマーク近辺とすると、90メートル近いシュートだったことになる。

 ホーンチャーチ・スタジアムは1956年に建設され、収容は3500人。うち座席は800席。この日の入場者は615人だった。 

 ルーク・コウルソンはリバプールとマンチェスターの間にある「セントヘレンズ」という小さな町の出身で、31歳のウインガー。マンチェスター・シティのアカデミーで育ったが、すぐにはプロになれず、アメリカのミシガン大学に在籍しながら、いくつかのイングランド・クラブのテストを受け続け、ようやくチャンピオンシップ(イングランド2部)のカーディフ・シティと契約した。しかし、リーグ戦出場はならず、その後は主として「ノンリーグ」と呼ばれる5部以下のクラブで活躍してきた。ウェストン=スーパー=メアと契約したのは2024年の5月のことで、今季は39試合に出場して19得点という「エース級」の活躍を見せている。

 ちなみに、「ウェストン=スーパー=メア」という地名を私は初めて聞いたのだが、イングランド南西部、サマセット州の北部にある人口8万5000人の保養地だという。「スーパー=メア」はクラブのニックネームではない。「メア」はラテン語由来の「海」のことであり、どうやらフランスで各地にある「○○○シュルメール(海辺の○○○)」という地名の付け方をまねしたものらしい。すなわち、「海辺のウェストン」ということになる。

 その名のとおり、この町はブリストル湾に臨む保養地で、海岸には2本の大きな桟橋(船を係留するためのものではない)がつくられ、そこが遊園地のようになっていて、夏のバカンスの時期にはたくさんの人を集めるという。

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